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help リーダーに追加 RSS 外国語で書いた文学「千年の祈り」

<<   作成日時 : 2007/10/08 00:43   >>

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イーユン・リーはすごい!
「千年の祈り」を読みながら何度もこうつぶやいた。

小説の素晴らしさはもちろんだが、私にとってもう一つ「すごい」と思えるのは、外国語である「英語」でこの本を書た、ということだ。

24才でアメリカに留学。32才で外国語である英語で初めて書いた小説が、数々の文学賞を総なめにした。アメリカに渡ってわずか8年である。


千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS)
  • イーユン・リー、篠森 ゆりこ
  • 新潮社
  • 1995円
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livedoor BOOKS
書評/海外純文学


著者の母国、中国を書いた10編の短編集である。

この小説集の中には、中国の古い価値観から自由になりたいと思いながらも、今一つ非情になれずに、しがらみを捨てきれない人々がいる。抗えぬ力によって、孤独に陥らざるをえなかった人々がいる。
50才を過ぎ工場が閉鎖され、仕事が無くなった独り身のおばさん。ゲイの男。結婚しないハイミスの先生、等々。中国という抑圧的な世界の中で、違和感を感じている人達なのだ。

こうした孤独な人々を書きながら、この小説は決して暗い印象を与えない。
それは一切の情感を排した、乾いた文章からくるものだろう。突き放したような、淡々と書かれた言葉の積み重ねの中から、読み手は逆に登場人物の孤独さを感じさせられるのだ。

そして、自分たちの孤独さに苛つきながらも、最後はいさぎよく孤独さを受け入れる主人公達に、いつか寄り添って、連れて行かれてしまう。硬質ではあるけれど、それ故の清々しさも感じられるのである。

こうした、深い小説を母語ではない言葉で書いた著者は、つくづくすごいと思う。

10編の中で印象に残ったのは、
代々宦官を宮廷に送り出してきた町そのものを主人公に据えた、「不滅」
アメリカに渡ったゲイの男性が中国に残してきた恋人である京劇男優について語る「ネブラスカの姫君」
17人の人を殺した男の、その理由「柿たち」
ミス・カサブランカと呼ばれる独身教師の埋めようのない心の穴、「市場の約束」
の4作が特に気に入った。

部分的に共感したのが、アメリカに渡った娘を中国から父が訪ねる話の「千年の祈り」だ。
せっかく訪ねた父に、娘は多くを語らない。責める父に対して娘は言う。「中国語では話せない」と。
ずっと長い間存在していた、父の「嘘」に気付いていた娘は言う。
「中国にいた時は黙っているのがクセだった。自分の気持ちを言葉にせずに育ったら、違う言語を習って新しい言葉で話すほうが楽なの」。

母語ではない言語で話す時、母国の慣習や精神的制約から解放されて、自由に話せる感覚は共感できる。前回のエントリーでもこの事を書いた。(参考過去記事)

こうした、言葉という壁をたった8年できれいに乗り越え、誰にもまねの出来ない世界を作り上げたイーユン・リーの小説を読めて良かったと思う。
そして少しの後悔も。  「英語で読めば良かった」と。
原書はこちら↓
A Thousand Years of Good Prayers: StoriesA Thousand Years of Good Prayers: Stories
Yiyun Li

Random House Inc (P) 2006-09-12
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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
中国に生まれたわけではないのに、なぜか郷愁を誘うその語り口。今回もリウマチばあちゃんワールドに引き込まれて一気に読んでしまいました。

わずか留学8年で英語で書いた小説が数々の賞を取るというのはすごいですね。

英語でだと楽に思ったことが話せるというのはよくわかります。私もビジネスで相手と交渉するときは、なぜか英語で書いたり、話したりする方がストレートに物を言えました。日本語だとどうしても一歩ひいて控えめになってしまうのが不思議です。言葉の持つ性質なのでしょうか。思考が言葉を生み出すというより、言葉によって思考が形成されるという感じです。
かいちゃん
URL
2007/10/08 05:56
う〜ん、今回もまたまた面白そうな本ですね。

”違う言語を習って新しい言葉で話すほうが楽なの”
なんて、切ないせりふでしょうか・・・。

違う言語を使えば、自分を客観的に見つめられ、束縛からも放れ、自由に話せるのでしょう。
その時、自分の奥底にあってなかなか取り出せなかった感情までもが、素直に表現できるのでしょう。
きっと、それは開放感があって気持ちのいいものなんでしょうね。

でも、深いところでは、母国だけがの持つ感覚と言うかニュアンスみたいなものは伝えることができるのでしょうか?
私は、英語をたいして話せないので、そこのところは分かりませんが・・・。

「イーユン・リー」とても、気になる注目の人ですね。

ハルミズキ
URL
2007/10/08 09:33
ブログランキングから来ました。私は43歳で最近英語を話したい思うようになりました。参考にさせていただきます。また遊びに来ます。人気ブログランキングを応援していきます、ポチッ。
フリーダム
URL
2007/10/08 09:41
うーん・・・って唸りそうになりました
本当に本を深く読み感じてらっしゃいますね
英語で読めば良かったにはクスって笑ってしまいましたが、戴いた本ですもの仕方ないですね
日本という小さな国でもしがらみやら何やら、ありますものね
中国は広大ですし、やはり因習が深いかもしれませんね
でも、どこの国とか関係なく人間は人間なのだと感じる事が出来ますね
立場は違えど、同じように悩んだり、喜びも苦しみもあるのですから・・・素敵な作家に出会えて良かったですね
とまる
2007/10/08 13:10
ダブってしまいました
コメント1つ削除しておいてくださいませ(ペコリ)
とまる
2007/10/08 13:11
うわぁー、なんと興味をそそられるレビューでしょう!!
この「千年の祈り」、“週間ブックレビュー”で紹介されていて、気になっていたところでした。(ご覧になったかどうかわかりませんが、同じ日に取り上げられていた「父さんの銃」も読んでみたいです)
リウマチばあちゃんさんは、主人公の心のひだや細かな情景描写まで、純文学をふかーいところまで読み込んでいらっしゃいますよね。以前、「最近は、会話の多いエンタメ系より、地の文の多い文学作品のほうが好きになってきた」と書いていらして、読書通の方はそんなふうに感じられるのだと驚きました。
今はAlistair MaCleod作品を読んでいらっしゃるのですね。会話文が出てくると「ページが進むぅ!」とほっとする私(笑)には憧れの本です。(でも、雪深い風景を思い浮かべながら眠りに落ちてしまいそう)こちらの感想も楽しみにしています。
ももしっぽ
2007/10/08 16:05
かいちゃん
コメントありがとうございます。

>思考が言葉を生み出すというより、言葉によって思考が形成される
この感じ、分かります。私も本を読んだ後に得られる感想や感激は漠然とした、面白かった、感動した、という類のものなのですが、書くということを通してそれが具体化するのですよね。言葉を探し出す事で、自分の考えをまとめあげることが出来るような気がします。
この本の著者は中国の共産党体制にかなり批判的な考えで、その思いを中国にいた時は口にすることが出来なかった。知らず知らずに中国語で話す時は、自己検閲をしていたようです。アメリカに来て、英語で話す時はそういった縛りがなくなった、と後書きに書かれていました。自分の経験が色濃く反映された小説のようです。
リウマチばあちゃん
2007/10/09 00:39
ハルミズキさん
8年で文学賞をたくさん貰えるくらいの文章を書けるなんてすごいですよね。中国語より英語の方が自分の気持ちを素直に話せる、ということは分かるような気がします。特にこの本の著者は、中国という共産主義国家の中では、自由に自分を表現できない経験があったらしいです。
儒教的な古い考えもいまだに中国では強く、そんなところにも窮屈さを感じていたのだと思います。でも批判的に中国を書いているのだけれど、中国という故郷を愛しんでいるのが、行間から伝わってきます。良い本でした。
リウマチばあちゃん
2007/10/09 00:55
フリーダムさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
英語はそんなに上手に話せないのですが、英語で本を読むのが大好きです。
これからも読んだ本のことをどんどん書きますので、また遊びに来てください。応援ありがとうございました。
リウマチばあちゃん
2007/10/09 00:58
とまるさん
やっぱり日本語の本は読みやすい!(あたりまえ・笑)
でも英語で読んで見たかったです。8年の学習で書かれた文というものを、読んでみたかったような気がします。
イーユン・リーは中国の今の体制には批判的なようですが、中国そのものはとても愛しい母国のようです。そこに生きている人々への暖かい眼差しを感じます。
かなり厳しい、辛い人々を書いているのに、読後感の良い、とても印象的な本でした。
リウマチばあちゃん
2007/10/09 01:08
ももしっぽさん
週間ブックレビュー、見ました!
確か、女性作家(誰だか忘れた)がこの本を推薦していましたね。私も「父さんの銃」も読みたいと思いました。クルド人家族の話だったと思います。
今まで、文学にしてもミステリーにしても、読んでいたのは圧倒的にアメリカかイギリスの作品でした。カナダ人が書いた「Life of PI」がとても良かったので、それ以後少し目を広げて色々な国の小説を読んでみようと思いました。
Alistair MaCleodは初めて読むのですが、期待しながら読んでいます。まだ読み始めたばかりで、どんなふうに物語が進んでいくのか分からないのですが、カナダへ移住してきた祖先へ思いをめぐらす小説らしいです。色々な国を背景に書かれる本は、それぞれ違う香りがして、また違う面白さがあるものですよね。
リウマチばあちゃん
2007/10/09 01:26

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