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本日”Snow” 読了。 ボリュームも内容もズシリと重い本でした。 本の厚さと、著者自らが「政治を書いた」と言うこの本、読み終えられるか不安を持って読み始めた。著者のオルハン・バムクはトルコ人、この本の舞台もトルコ北東部の小さな町、Kars(カルス)。グルジアやアルメニアに接した貧しい田舎町だ。 出だしは、トルコという国についての知識不足の上に英語という不利が重なって、おまけにかなり複雑な英語で、なかなか読み進まなかった。しかし読み進むに連れてトルコの状況が理解できてくると読みやすくなり、中ほどからはもう夢中で読み終えた。 政治という難しい題材を、何とも美しく切なく、しかし面白く、書いているのだろう。 もうこれは絶対お薦めです!! 今年は出だしからこんなすごい本を読んでしまって、後に読む本の印象が薄くなりそうな予感さえする。
学生時代の政治運動が元でドイツに亡命した主人公Kaが母親の葬儀のために12年ぶりに故郷イスタンブールに戻ってきたところからこの物語は始まる。ドイツで詩を書き、トルコ人コミュニティや、故国で少し名が通るようになってきたKa。知り合いの出版社に頼まれて、市長が暗殺され更にスカーフで髪を隠す少女達の自殺が相次ぐカルスへ取材に出かける。しかしKaの本当の理由は、カルスに住む学生時代の同級生、美人のIpekが離婚したと聞き、Ipekの心を捉えてドイツへ連れて行きたいという思いからだった。 カルスへ向かうバスの中、たまたま地方回りの劇団員と一緒になる。降りしきる雪の中、カルスでのその劇団の公演の最中に、クーデターまがいの事件が起こってしまう。大雪で道路が閉鎖され、外界との連絡が遮断されるという偶然も重なり、そのクーデターは一時的に成功してしまう。自作の詩の朗読のためにその劇場に居合わせたKaは事件に巻き込まれてしまう。 アジアとヨーロッパにまたがった国トルコは、その地勢の通り複雑な政治状況の中で現政権はEU入りを目指している。 西洋的な国家を目指す勢力と、それに反対するイスラム教を信奉する勢力、さらにはクルド人勢力、と入り乱れる現在のトルコ。 主人公Kaは神の存在を強く意識してはいないatheist(無神論者)なのだが、事件に巻き込まれることによって、イスラム教徒の思いや、西欧的な価値観を強く持つ人の思い、政教分離的な考え方、様々な思いに直面する。 しかしKaにとって何より大事なのはIpekの心を掴むこと。ドイツでの孤独な暮らしが語られるほどに、Ipekに対する思いの切なさが伝わってくる。ドイツではこの4年間水が涸れたように詩が書けなかったKaに、カラスの町は、まるで天から舞い降りてくる雪さながらに、詩を降り注いでくれる。 政治を背景にしているけれど、これは恋愛小説なのでは?と思ってしまうほどなのだ。 初めから終わりまで、降り続く「雪」の中で物語は語られる。 「雪」の描写は美しく、厳しくもあり残酷でもあるこの小説をや、わらかな美しさで包んでくれる。 「雪」は全て3本の軸の交差からなる6角形で、天から落ちてくるその過程で、温度、風の強さ、場所、雲の高さなどからその全ての形が変わってくる。一つとして同じ形はない。 そう、まるでこの地上に生きている我々人間と同じなのだ。 見事に政治に恋愛を絡めて読者に飽きさせないテクニックや、「私」である語り手が後半部分に入るまで誰なのか分からない仕掛け、そして中ほどで明かされるKaの結末。 結末が先に分かってしまうことで、どうしてその結末に至るのか?が、逆に読者の興味を駆り立てる、ある意味ミステリー仕立てのようなストーリーの転回の仕方が、すごく巧い。 著者自身の政治的メッセージは強く書かれてはいないのだけれど、登場人物に様々な立場からの意見を語らせることにより、9.11以後イスラム教徒をどこか異端視する我々に、ムスリムの考えを的確に伝えているのではないだろうか。イスラム教徒やクルド人、貧しい人々の思いを丁寧に書くことで、今まで感じていたムスリムのイメージが覆されてくる。 その意味で、強いメッセージ性のある小説だと思う。 著者オルハン・パムクは2006年ノーベル文学賞を受賞。 我々日本人にとっては、村上春樹がノーベル文学賞を取るのでは?とずいぶん期待した年だったが、実際に受賞したのはこのバムク氏。また、この”Snow”はThe New York TimesのThe 10 Best Books of 2004(こちら)にも選ばれていて、世界的に絶賛されている。(ちなみに村上春樹のKafka on the Shoreは2005年のbest 10 Booksこちら) オルハン・パムクの書くトルコ語の文章はかなり難解らしく、英訳に当たってはその雰囲気を壊さないように気をつかったらしい。そのせいか英文はかなり難しい。1センテンスがかなり長い文が多く、何度も読み直さないと、意味がつかめない。苦労しながらの読書だったが、面白さがそれに勝って、とにかく後半は一気読みだった。 総語数は、約185,000語。(語数が表示されていないので私の計算による)。 長い上に難しい英文だったが、読む苦労以上のものが得られる本だと思う。 英語に自信がなければこちら日本語をどうぞ。ちなみにamazonのレビューによると、日本語も読みづらいとか。
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知っている人は知っている、毎年大晦日恒例のスペシャル・バンドによるコンサートが、今年も開催されました。このスペシャル・バンドは、毎年大晦日に3時間以上の素晴らしいコンサートを行うのですが、まず普通の人がネットなどを使っても、その告知を知るのは難しい!... ...続きを見る |
わが青春のEVERGREEN 2008/01/09 09:33 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
こちらで昨年ベストワンの「Life of Pi」を買ったところです。 |
バードランド 2008/01/09 09:56 |
強いメッセージのある物語ですね。 |
ハルミズキ URL 2008/01/09 17:13 |
さすがですね〜、この本を一気に読まれるなんて。私は日本語で読みかけたまま中断しています。本当に訳が読みづらいです。でも、これも原文の雰囲気を出して意図的なのでしょうか? |
KIKI URL 2008/01/09 18:43 |
この本をはじめほかの本も、オルハン・パムクがノーベル賞を受賞したときからずっと気になっていながら、なかなか手にとるチャンスがなかったのですが、こうしてリウマチばあちゃんが読まれて、私も読んでみたくなりました。O・パムクがノーベル賞を受賞したときに、カナダの作家、Margaret Atwoodがガーディアン紙に寄せた文の終りのほうで、 |
michi 2008/01/09 20:00 |
バードランドさん |
リウマチばあちゃん 2008/01/10 01:00 |
ハルミズキさん |
リウマチばあちゃん 2008/01/10 01:14 |
KIKIさん |
リウマチばあちゃん 2008/01/10 01:35 |
michiさん |
リウマチばあちゃん 2008/01/10 01:53 |
今年初めに素晴らしいレビューを読まさせていただいて幸せです。かなり難しそうですが、簡単には先に進めない物語を読み進めていくうちに訪れる感動ってきっとすごく大きなものなんだろうなあ、と思います。ストーリーもとっても興味がひかれるし、michiさんの紹介されたMargaret Atwoodの賛辞もぐっときました。あとは作者の英語に私がついていけるかどうか…。 |
niko 2008/01/10 03:38 |
Life of Pi にしろ、このSnow もそうですが、リウマチばあちゃんさんの丁寧なレビューを読ませていただくと、読んでみたい!と思ってしまいます。 |
まりこ 2008/01/10 21:22 |
昨夜、記事を読んでたら、主人が寝ると言うので。。。 |
とまる 2008/01/10 22:18 |
nikoさん |
リウマチばあちゃん 2008/01/11 00:24 |
まりこさん |
リウマチばあちゃん 2008/01/11 00:42 |
とまるさん |
リウマチばあちゃん 2008/01/11 00:48 |
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