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help リーダーに追加 RSS Saturday 「土曜日」

<<   作成日時 : 2008/06/19 00:07   >>

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昨日6月17日"Saturday"を読了。

現代イギリスを代表する小説家として有名なIan McEwan、ぜひ読んでみたいと思っていた。
最高傑作と言われているのが"Atonement"だろうが、昨年映画化されたことから(邦題「つぐない」)、"Atonement"は映画で楽しむことにして今回選んだのがこの"Saturday"。

この小説、語彙が難しく読むのにかなり苦労した。主人公Henry Perowneは脳外科医。非常に微細に脳外科手術が描かれるのだが、脳の細部を現す単語など全く馴染みがなく、電子辞書にさえ載っていない。日本語でだって脳の部位を示す言葉など読んでも分かるはずもない。第1章を読み終えたところで、分からない単語にこだわるのは止めて(特に脳に関する単語)、飛ばし読みで読み終えた。

Saturday
SaturdayIan McEwan

おすすめ平均
stars揺れ続ける人間の心象を描いた作品
stars土曜日の朝はもう少しゆっくりした方が・・・・・
starsマキューアンにしては
starsPresent Tense
starsA moving story

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Henry Perowneは優秀な脳外科医。研修医を従え脳外科手術に追われる日々だ。
2003年2月土曜日のロンドン、まだ夜が明けぬ午前3時40分、ふと目が覚めたヘンリーは寝室の窓辺に立ち薄暗い通りを眺める。その時、火を噴きながら上空を横切りヒースロー空港へ向かう一台の飛行機を目撃する。
テロなのだろうか?
ヘンリーの心に不安がよぎる。9.11以降、漠然とした不安が人々の心を覆っているロンドン。今日はイラク侵攻反対の大規模デモが予定されていた。朝、同僚医師とのスカッシュを楽しむために出かけたヘンリーはデモ隊と遭遇する。交通規制された道に進入したヘンリーは一台の車と接触し、相手と諍いになってしまった。その事がのちに大きな恐怖の引き金となる。


何一つの汚点が無いようなヘンリーの生活。優秀な脳外科医として活躍し、妻は弁護士、23才の娘は新進の詩人として賞を取り、もうすぐ詩集が出版される。19才の息子は才能豊かなブルースのギタリストとして注目されている。48才になった今でも妻を深く愛していて、夫婦仲は円満。

まるで絵に描いたような幸せな家庭ではあっても、9.11以降の「現代」を覆う不安から逃れることが出来ない。幸せで安全な家庭から一歩外に出たら、そこでは何が待ち受けているか分からないのだ。いや、幸せだと思っている家庭の中にだって、小さな不安は潜んでいるのだ。

文学を愛する娘は、恐ろしいほど文学を理解できない父に文学を教えようと躍起になっている。なにしろヘンリーときたら文学を読む暇があったら医学の勉強をする方がずっと有益だ、と頑なに信じているのだから。そんな娘が今日半年ぶりに戻ってくる。楽しいはずの時間が言い争いになることだってあるかもしれない。認知症で施設にいる母を訪ねると心が重くなる。高名な詩人で偏屈な義父は、同じく詩人である孫娘と仲違いしたままだ。今日こそ二人の関係を修復させなければと気が重い。

脳外科医ヘンリーのある土曜日の一日を微細に描き、現代社会が抱え込まざるを得ない漠然とした「不安」と「不安定さ」を文学の力で示してくれる。そして「文学」に価値を見いだせない男が、最後は「文学」の持つ力で現実に起こった恐怖から救われることになる。少々皮肉なこの展開に、「文学」を読むことが大好きな私はニヤリとしてしまう。


脳外科手術の場面を事細かに表現し、「本物の脳外科医が書いたとばかり思った」と言わしめたこの小説。その緻密さのせいで、手術場面や医療現場で使われる単語は知らない単語ばかり。結局分からない単語は飛ばし読みで読み上げたので、どこまで正確に読み込めたか自信がない。

邦訳はこちら。↓
土曜日 (Shinchosha CREST BOOKS)
土曜日 (Shinchosha CREST BOOKS)小山 太一

おすすめ平均
stars明日のことは誰にもわからない

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日常に潜む怖れを9.11以後の現代を舞台に細やかに書いたこの小説、最終章の温かさで心地良く本を閉じることが出来た。英語は難しいけれど、読む価値の充分ある本だと思う。

ページ数、289ページ。  総単語数、91,411語。

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Water / 水
I was searching for water for a long time Looking for water’s shape, finding it has none Without knowing what water is I was searching for water for a long time Falling rain and wellsprings Did not constitute water to me Without knowing what wa... ...続きを見る
☆ OVER THE SKY ☆ ...
2008/06/20 11:08

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
電子辞書にさえ載っていない。ってことはネイティブでも知らない位かも知れませんね。作者もわざと難解な語句を使うことで効果を狙っていたのかも。
個人的には瀬名秀明の「ブレインバレー」を思い出しました。小説なのか学術書なのか分からなくなるような、小説でした。
けん
URL
2008/06/19 07:45
この本に書かれている「現代の不安」、それはそのまま日本も共有しているものかもしれませんね。とくに今月に起きた事件や自然災害のことを思うと、テロに対する漠然とした不安はそのまま、日本人が持つ「怖い世の中になった・何がおきるか分からない」という不安と共通しているように思います。きっと、とてもタイムリーな本なのかもしれませんね。

この作品、医学用語が多いとうかがって、「あ、私には無理」と思ったのですが、テロや今月、日本で起きた事件などをより深く問うために読んでみたい気がします。
michi
URL
2008/06/19 21:09
けんさん
そうなのです。電子辞書にも載っていません。
例えば"glioma"アルクのHPで調べたら「神経膠腫」。日本語でも何のことかサッパリ分かりません。
こういう医学用語はこの小説の中では大きな意味はない、単に肉付けで本筋は別のところにある、と考えて飛ばし読みしました。
現実主義者の主人公と詩人の娘の対比が面白かったです。
リウマチばあちゃん
2008/06/20 00:09
「つぐない」も含めて評価が高い作家のようなので、読んでみたいのですが、日本語でもムリそうです(^_^;)お姉さまはこんなクオリティの高い作品も知らない単語を読み飛ばしつつ読み通すことができるんですね。改めて尊敬します。

専門用語は私も一般のネイティブもわからなく飛ばすと思います(笑)私も「チームバチスタの栄光」を読んでいて、専門用語で意識なくなりましたもん。それでも日本人は普通の人でも脳の病気を「脳溢血」「脳梗塞」などと具体的に違いはわからなくても細かい病名で言えますよね。私が教わった先生たちはみんな「脳の病気」でしたよ(^。^)
Lily
2008/06/20 00:10
michiさん
初Ian McEwan、面白かったですが、同時に難しかったです。医者ではないMcEwanがこれほど事細かく医学について書くということは、徹底したリサーチの上で書いたのでしょう。この人の他の作品もそうなのでしょうか。
漠然とした怖れが現実の恐怖に重なっていく様子は、スリリングでした。確かに今の世界は不安に覆われている気がします。いつテロが起きるか分からない、環境が壊れていくのでは、キレる人間にどこかで遭遇するのでは、私達の回りには不安が一杯。

もう一つ、私が興味深かったのは、文学を理解できない父と、文学を愛する娘のやり取りでした。父娘の文学論争もとても面白かったです。
リウマチばあちゃん
2008/06/20 00:28
Lilyさん
>読み通すことができるんですね。改めて尊敬します。

いえいえ、かなりいい加減な読み方です。この小説のテーマは医学ではなく、テロに象徴される恐怖なのではないかと思ったので、医学用語、手術場面はどうでもいいと勝手に判断して読みました(笑)。でも、実際はかなり読むのがきつかったです。

この小説の主人公、ヘンリーはイギリス、アッパークラスの典型のような人物設定で、「へぇ、イギリスの知的成功者はこんな生活を送るのか」と驚きでした。土曜日、休日だというのに実に忙しい、朝からスカッシュをし、施設に母を見まい、義父と娘を迎えての夕食の買い物、おまけに息子のライブを聴きに行って、帰ってきて料理。はぁ〜、エリートで居続けるのって大変だぁ。。
リウマチばあちゃん
2008/06/20 00:45
当時入院して手術後だった私(脳ではないです)にはSaturdayの病院の場面は臨場感がありました。ただこのオトーサン(Perowne氏)ってスーパーマンっぽくありません?たったの土曜一日でこんなにいろいろ起こると、普通だったらヘロヘロですよ。

でも最近の無差別殺人事件などを考えると、確かに「一寸先は闇」とか「明日は我が身か」という言葉が頭をよぎりますね。読者のなかには「料理の場面をクドクド書くな」という意見もありましたが、私はあそこが一番良かったです(笑)。魚のシチューって美味しいのかな。今度作ってみようかしら。
Rumiko
URL
2008/06/20 22:03
Rumikoさん
>「料理の場面をクドクド書くな」という意見もありましたが、私はあそこが一番良かったです

私も料理の場面、好きです。この小説に限らず、料理が本の中に出てくると食べたくなるのですよ。知らない料理だと「どんな味なのだろう?」と興味津々。料理の場面は特に熱心に読みます(笑)。
この小説は料理の場面に限らず、ヘンリーの一日をクドクドと書くことで成り立っている小説ですね。私にはスカッシュの場面がクドクドと(スカッシュというスポーツをよく知らないせい?)しつこく感じました。
リウマチばあちゃん
2008/06/21 01:07

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